ベトナムのIT事情Resorz社(オフショア開発.com)の調査によると、近年ベトナムはITとの結びつきが強く、オフショア開発(海外企業・現地法人にシステム・ソフトウェア開発業務を委託すること)の委託先として最も人気のある国です。この背景には、ベトナムが国を挙げてIT人材の育成に注力しており、IT人材が豊富かつレベルも高く、それでいて人件費が安価であることが挙げられます。その他の理由として、ベトナムは親日国であること、日本と地理的に近いこととなども挙げられます。しかしながら、ベトナムのITに対する取り組みについて具体的に把握している方は決して多くありません。そこで本記事では、ベトナムでのオフショア開発およびIT人材の活用を検討している会社経営者の方に向けて、ベトナムでITを軸に事業を展開する弊社freecracyが、ベトナムのIT事情をさまざまな観点から解説します。オフショア開発でベトナムを選ぶ根拠については、以下の記事で解説しています。ベトナムのIT事情と関連する内容であり、併せてご確認いただくと自社のシステム・ソフトウェア開発に役立てられます。オフショア開発でベトナムを選ぶ根拠とは?単価/IT人材/日本語/地理参考:Resorz「オフショア開発白書(2022年版)」ベトナムのIT:IT人材が魅力的ベトナムのIT事情の1つに、魅力的な人材が揃っていることが挙げられます。本章では、ベトナムのIT人材が魅力的であると考えられている理由の中から代表的な4つをピックアップし、順番に解説します。IT人材人口が多いTopDevの調査報告書によると、2022年時点におけるベトナムのIT人材(開発者)の人口は48万人です。また、近年のベトナムでは、大学でIT・テクノロジー系の学問を専攻し、エンジニアとして社会に出る人々が毎年5万7,000人増加している状況です。ちなみに、ベトナムのIT人材の約9割は都市部に集中しています(ホーチミン:55.3%、ハノイ:34.1%、ダナン:5.9%)。IT人材の年齢の内訳をみると、20〜29歳が53.97%、30〜39歳が26.98%を占めており、ベトナムのIT人材の過半数は若者であることがわかります。また、経験年数が3年以下のIT人材は52.1%を占める一方で、5年以上の開発者も約30%占めている状況です。私はこれまで10年以上ベトナムでIT関係の仕事をしており、昔はよくジュニアエンジニアしかいないと言われましたが、現在では十分プロジェクトを任せられる上流から下流まであらゆるレベルのIT人材が揃っています。スキルレベル別にIT人材の人口動態をみると、ミドルレベルが最も多く、34%を占めています。その後は、ジュニアレベル(29%)とシニアレベル(18%)が続いています。参考:TopDev「VietnamITMarketReport_TechHiring2022」勉強量が多いベトナム人は向上心が高いうえに、日本人よりも転職が身近にあることから、社会人になってからもスキルアップのために勉強を行う人が多くいることがわかっています。特に、日々新しい技術が発明・開発されるITの世界において、勉強は欠かせません。IPAによる2017年の調査報告をみると、ベトナムのIT人材の平均勉強時間は3.5時間(週あたり)で、IT大国であるインドの4.0時間に次いで2位です。なお、本調査において、中国はベトナムと同率2位であり、日本は残念ながら最下位の1.9時間であると報告されています。ベトナムでは、2010年代より高い経済成長が続いてきたことも相まって、努力をすればさらなる高収入が実現できるといったモチベーションが強いことが、こうした現状の背景にあると考えられています。参考:経済産業省、みずほ情報総研「我が国におけるIT人材の動向」令和3年2月4日エンジニアのレベルが高いベトナムは国策として教育の推進を優先事項として掲げており、特に注力しているのが情報技術です。その成果もあって、2017年にベトナムは国際数学オリンピックで世界3位を獲得しています(2022年は世界4位)。最近10年間の平均順位は10位程度を推移しており、これは日本やヨーロッパ各国よりも高いです。また、近年のベトナムは、国際プログラミングコンテストでも好成績を残しています。特にベトナム国家大学ハノイ校は、ベトナムの名門大学として2015〜2019年まで5年連続で決勝大会に進出しました。2018年の順位は15位で、ハーバード大学やスタンフォード大学、インド工科大学といった名門大学よりも上位の成績を残しています。コストが安いベトナムのIT人材の人件費はAI/ML(Kubermetes、TensorFlows、Python)およびクラウドコンピューティング(AWS、GCP、Azure)を中心に若干上昇してきていますが、日本国内の開発者に比べると依然として安い水準です。一般的にベトナムのIT人材の人件費は、日本の2分の1から3分の1程度と考えられています。そのため、コスト削減を実現する手段として、ベトナムのIT人材を活用したオフショア開発の実施は有効な選択肢だといえます。ベトナムのIT:開発における得意分野が多彩ベトナムのIT人材には、得意分野が多彩であるという特徴もあります。本章では、プログラミング言語および開発ジャンルの側面から、ベトナムのIT人材の得意分野を紹介します。プログラミング言語前掲したTopDevの調査報告書によると、ベトナムのIT人材に最も人気のプログラミング言語はJavaScriptです。なかでも、React、Node.js、Angularなどに人気が集中しています。上記のほか、Java、MySQL、Spring Boot、Laravel、.NET Core、Django、AWSなどのプログラミング言語の人気も高く、ベトナムのIT人材は多彩なプログラミング言語に対応していることが窺い知れます。開発ジャンル近年、ベトナムのオフショア開発委託先の中には、スマホアプリ開発に特化した企業が多く、ベトナムのIT人材の中でもスマホアプリ開発の人気が高まっています。また、Webシステム開発やソーシャルゲーム開発を行うベトナム企業も増加傾向にあります。そのほか、アート系デザインを得意とする企業や、ゲーム・アニメの2D/3DグラフィックやUI/UXデザインなどのデザイン業務に対応する企業もみられます。以上のことから、ベトナムには、さまざまな分野を得意とするIT企業が多いといえます。ベトナムのIT:国策によるIT人材育成ベトナムでは1998年に成立した教育法にもとづき、小学3年生より英語教育およびコンピューター教育が行われています。また、政府主導で学校全体のデジタル化の推進および、IT機器の積極的な導入が進められており、特にSTEM科目(科学・技術・工学・数学)の強化に力が注がれています。こうした国策が進められた結果、2021年時点のベトナム国内におけるICT関連の売上は約1,361億USドルにまで及んでいる状況です。上記のほか、ベトナムではインフラ整備も積極的に進められています。例えば、2019年時点のベトナムのインターネット利用率は70%(人口に対する比率)であり、前年同期比で10%増加しています。また、スマートフォン保有率は93%(16~64歳のインターネット利用者に対する比率)に及び、今やベトナムの成人のほとんど全員がスマートフォンを持っています。つまり、ベトナムのインターネット普及率とインフラ整備の度合いは先進国に匹敵するレベルにまで達している状況です。さらに、ベトナム政府は外資企業の誘致にも力を入れています。ベトナム系IT企業に対するサポート体制を充実させるだけでなく、外資系のIT企業に対して税制面での優遇処置を講じています。具体的には、4年間の法人税免税と、その後9年間の減税(優遇期間は最大30年まで延長可能)を提供し、ベトナム進出を後押ししている状況です。その結果として、現在では日系をはじめとする多くの外資系IT企業がベトナムに進出しています。以上のような国を挙げた教育政策・インフラ整備・外国企業の誘致などが実を結び、ベトナムはIT人材大国へと成長しています。参考:日本貿易振興機構(ジェトロ)デジタル貿易・新産業部「ベトナム 教育(EdTech)産業 調査」2021年1月ベトナムのIT:将来性今後も、ベトナム政府は国のデジタル化およびDX化を推進すべく、さまざまな施策を打ち出していくものとみられます。実際に、2020年には、ベトナム政府が「2025年までの国家デジタルトランスフォーメーション(DX)プログラムおよび2030年までの方針」を承認し、首相が政府議定「749/QD-TTg」に署名しています。この計画では、ベトナムが2030年までデジタル国家になることを目指すビジョンを持ち、政府の管理・運営、企業の生産活動・営業活動、人民の生活・働く環境を改善し、根本的かつ包括的に刷新する目標を目指しています。ベトナム政府は、デジタル政府・デジタル経済・デジタル社会を作る一方で、グローバルデジタル企業の設立支援も展開すると述べています。「749/QD-TTg」の中では、2030年までに「光ファイバーのカバー率100%」「ICT開発指数(IDI)世界30位以内」「世界競争力指数(GCI)世界30位以内」「ブロードバンドカバー状況 全国で5G利用可」などの具体的な目標が定義されています。これまでもベトナム政府はIT人材の育成に力を入れてきましたが、今後は上記の計画をもとに、国のDX化・行政のデジタル化・IT化をさらに強く推進していくものと推測されています。まとめ近年ベトナムはオフショア開発の委託先として最も人気のある国です。IT人材の育成に注力していることが、オフショア開発委託先としてベトナムに人気が集まる要因の1つです。ベトナムのIT人材の特徴として、単純に人口が多いというだけでなく、勉強熱心でエンジニアのレベルが高く、日本人エンジニアよりコストを抑えられる点などにも魅力があります。また、プログラミング言語と開発ジャンルの側面で多彩な得意分野を持ち、オフショア開発委託先としてさまざまな開発業務を委託できます。ベトナムIT市場は今後も成長が見込まれるため、オフショア開発の委託候補先として検討してみることをおすすめします。日本とベトナムのビジネス環境を熟知し、50万人のベトナム人の優秀なエンジニアデータを保持するfreecracyのラボ型開発(オフショア開発の一種で、一定期間にわたり専属のエンジニアチームを確保し、委託元の指示のもとで開発を行うこと)では、「無限×高水準のエンジニアリソース」で理想の開発チーム・環境の構築を力強くサポートいたします。ラボ型開発のご質問・ご依頼がありましたら、freecracyまでお気軽にお問い合わせください。