オフショアとは?オフショア(英語:Offshore)とは、もともと「そこから離れること」を意味する言葉ですが、ビジネスシーンにおいては「海外(特に新興国や発展途上国)」をさします。別名、オフショアリング(Offshoring)とも呼ばれています。また、オフショアは、「コスト削減を目的に、自社の業務を人件費の安価な海外企業や海外子会社に対して委託・移管する行為」をさす言葉としても使われています。ちなみに、オフショアの対義語は、オンショア(英語:Onshore)であり、自国内もしくは自社内のみで業務を行うことをさします。近年、インターネットの急速な普及や、新型コロナウイルス感染症拡大によるリモートワーク推進の流れなどを背景に、コールセンター・IT開発の拠点・バックオフィス業務など、さまざまな業務でオフショアを活用する企業が増加傾向にあります。また、アウトソーシング(単一業務を外部委託すること)やBPO(前後の業務も含めて関連するプロセスすべてを継続的に外部委託すること)などを行う際も、オフショアの活用が一般的になりつつある状況です。オフショアのメリット・デメリット本章では、オフショアの活用で生じるメリット・デメリットを順番に解説します。メリットオフショアを活用する主なメリットは、以下の2点です。コスト削減が期待できる人材不足の問題を解決できる業務委託先の企業が拠点を置いている国によって差は見られるものの、一般的にオフショアを活用すると人件費を抑えやすく、結果的として自社における大幅なコストカットが期待できます。また、日本では少子化が進行しており、人材不足に悩まされている企業が多く存在しますが、人材が豊富な国に拠点を置く企業にオフショアを行うことで、人材不足の問題を解決できます。デメリットこれに対して、オフショアの活用では、主に以下のようなデメリットの発生が問題となることもあります。円滑なコミュニケーションが難しい進捗管理が難しい産業の空洞化や雇用の喪失を引き起こすおそれオフショアを行う場合、業務委託先とのやりとりでは英語が用いられるケースが一般的です。そのため、英語の知識・スキルが不足している場合、コミュニケーションが円滑に取れず、業務に支障が出るおそれがあります。また、オフショアを活用すると、自社の目が届きにくい海外で業務が進められることになります。これにより、業務管理が行き届かなくなるおそれもあります。そのほか、今後オフショアの積極的な活用がさらに進み、国内企業の生産拠点が海外に移転する事例が増加することで、産業の空洞化や雇用の喪失などの問題につながる可能性もゼロではなく、日本社会全体の課題として認識されています。オフショアとIT業界IT業界において、オフショアは、「システムやソフトウェアの開発を人件費が比較的安価な海外の国で行うこと」を意味します。海外には日本よりも人件費が安価な国・地域が多く存在しており、こうした地域でシステム・ソフトウェアを開発することを「オフショア開発」と呼んでいます。オフショア開発については以下記事で詳細に解説しておりますので、システム・ソフトウェア開発を海外に依頼したいと考えている・興味がある方はぜひご一読ください。オフショア開発とは?活用される背景や目的、メリット・デメリットを解説オフショア開発の業務分担としては、顧客と直接コミュニケーションを取るのは本国の企業が担当し、テストの実施や装置の組み立てなどの開発業務は委託業務先の海外企業が担当するという形式を取るのが一般的です。近年、IT業界におけるオフショアで特に注目されている国の1つに、ベトナムが挙げられます。ベトナムのITエンジニアは、勉強に対する意欲が強いうえに日本語能力が高い傾向にあることから、即戦力として期待できます。また、大学時代からプログラムの学習や経験を積んでいるエンジニアが多くいるため、こうした人材を選んでオフショアを活用すれば、自社の大きな戦力となってくれるはずです。さらに、ベトナムは賃金が比較的安いことも魅力的であり、人件費をできる限り抑制したいと考える企業からすると大きなメリットです。以上のことから、最近では、開発に関するコストを少しでも安価に抑える目的のもと、ベトナムに拠点を置く日本企業も増加傾向にあります。以下の記事では、ベトナムがオフショア開発の業務委託先として大きな人気を集めている理由をより詳しく解説しています。オフショア開発でベトナムを選ぶ根拠とは?単価/IT人材/日本語/地理オフショアと金融業界金融業界において、オフショアは、「非居住者に対する租税環境の優遇国もしくは優遇地域(通称、タックスヘイブン)」を意味します。簡単にいうと、投資や事業を通じて収益を得ても税金が課せられなかったり、通常よりも課税額が少なかったりといったメリットを受けられる地域のことです。オフショアに該当する国では、戦略として税制上の優遇措置を地域外の企業に対して設けることで、海外の投資家や企業などを呼び込んでいます。金融業界におけるオフショアの代表的な国・地域には、香港・シンガポール・マカオ・イギリス領ケイマン諸島・バージン諸島・ルクセンブルク・モナコ・デラウェア州(アメリカ東部)・バハマなどが挙げられます。オフショア以外の選択肢のニアショア業務委託の手法としては、オフショアの他に「ニアショア(英語:Nearshore)」も選択肢に挙げられます。ニアショアとは、国内の地方都市の企業・拠点に対して業務委託を行うことです。一般的に、ニアショアの対象に選ばれるのは、自社の本拠地と比較して人件費が安価であり、業務委託によりコスト削減を期待できる地域です。ニアショアを活用する大きなメリットは、意思疎通が容易である点です。オフショアの場合は海外に業務委託するため、コストの大幅な削減が期待できる一方で、意思疎通するために言葉や文化の違いを克服しなければなりません。例えば、言語や文化を理解するための学習が求められますが、これには多くの手間・時間がかかります。これに対して、ニアショアの場合は国内に業務委託することから、使用する言語が同じであるため、言語を学習する手間やコストが発生しません。また、文化も同じであり、管理しやすい点もメリットです。コミュニケーションが円滑に取れるため、認識のズレが生じにくく、トラブルの発生リスクが小さいです。ただし、ニアショアでは、国内での業務委託となるため、オフショアほどのコスト削減が難しいです。また、地方都市は人口が比較的少ないことから、自社が望む人材を確保しにくい点もデメリットの1つです。場合によっては、「エンジニアのスキルが不足している」「システム開発に必要なプログラミング言語を扱えるエンジニアを確保できない」などの理由から、ニアショアを効果的に活用できないこともあります。ニアショアについては以下記事で解説しておりますので、併せて確認しておくとよりオフショアについて理解が深まります。ニアショアとは?オフショアとの違い、メリット・デメリットを解説