「ニアショア」と「オフショア」、これらの言葉を聞いたことはありますか?ビジネスの現場での業務委託やプロジェクトのアウトソーシングにおいて、ニアショア・オフショアの選択は非常に重要です。しかし、それぞれの具体的な意味や違い、そしてそれぞれのメリット・デメリットは明確に理解されているでしょうか?この記事では、ニアショアとオフショアの基本的な概念から、その違い、そしてそれぞれの利点と欠点について比較して詳しく解説します。ビジネスの成功の鍵となる適切な選択をするための手助けとして、ぜひ参考にしてください。ニアショアとは?オフショアとの違いは?ニアショアとは?ニアショア(英語:Nearshore)とは、国内の地方都市の企業・拠点に対して業務委託を行うことです。別名、ニアショアリング(Nearshoring)とも呼ばれています。日本においてのニアショアは、東京からみて遠方の、北海道や沖縄、九州などのエリアをさします。ニアショアを上手に活用することで、コスト削減、地方都市にソフトウェア開発等を業務委託することによる災害リスクの回避などのメリットが期待できます。ニアショアの業務委託先は、東京都をはじめとする日本国内の都心部と比較してIT人材の人件費が安価であり、業務委託によってコスト抑制を期待できる地域が選ばれるケースが多いです。ニアショアとオフショアの違い業務委託の手法としては、ニアショア以外に「オフショア(英語:Offshore)」の選択肢も存在します。オフショアとは、人件費の安価な海外企業や海外子会社に対して業務委託する行為です。ニアショアの場合、国内の企業や拠点に対してソフトウェア開発等の業務委託を行うのが一般的であることから、これらの業務委託先と使用する言語が同じであるため、新たに言語を学習する手間・コストなどが生じない点に大きな特徴があります。これに対して、オフショアでは、業務委託先とのコミュニケーションでは英語が用いられるケースが一般的です。そのため、英語の能力・スキルが不足している場合、コミュニケーションが円滑に取れず、業務に支障が出るおそれがあります。加えて、時差や文化的な違いについても留意する必要があります。オフショアの概要、メリットやデメリットについて詳しく知りたい場合は、以下の記事で解説しています。併せてお読みいただくことで、ニアショアとオフショアの特徴・ポイントを比較検討したうえで、自社にふさわしい業務委託の手法を把握できますので、ぜひご確認ください。オフショアとは?メリット・デメリット、IT業界での意味ニアショア・オフショアのメリット・デメリット比較本章では、ニアショアを通じてソフトウェア開発等の業務委託を行う際に生じる代表的なメリット・デメリットを順番に取り上げます。ニアショアのメリットはじめに、日本国内のIT企業を対象とするニアショアを通じて業務委託を行う際に期待されるメリットの中から、代表的な5つのポイントをピックアップし、順番に解説します。1.コスト削減ができるニアショアを活用すれば、対象の業務(例:システム開発・運用業務など)に携わるスタッフを自社オフィス内に常駐させる必要がなくなるため、固定費・光熱費などのコストを削減できます。コスト削減効果は、オフショアを活用した場合のほうが大きいものの、ニアショアでは言葉の壁がない点においては、魅力的な業務委託の手法だといえます。2.スムーズな意思疎通前述のとおり、ニアショアでは、業務委託先との間で言語の違いがなく、通訳を挟んでやりとりをする必要がありません。また、時差もないため、意思疎通が困難となり余計な時間をかけることがありません。そのため、委託した業務の遂行にトラブルが生じたとしても、スムーズに意思疎通できるため、素早く状況を確認して対処することが可能です。3.社員がコア業務に集中できるニアショアを通じて業務委託を行うことで、その会社独自のコア業務に人的資源を集中させることが可能です。自社の限られた人材を企業の成長を担う重要な業務に専念させることで、生産性や売上の向上などが期待できます。4.為替変動リスクがない2022年現在、内外における長期金利差の拡大、資源高騰に伴う日本の国際収支の悪化、コロナ禍における日本経済の成長力の弱さなどを主な要因として、大幅な円安が進行しています。昨今の為替(かわせ)変動の傾向を踏まえると、オフショアを用いると、かえってコストが増加してしまうおそれがあります。これに対して、ニアショアを活用すれば、基本的に国内の企業・拠点に対して業務委託を行うことから、当然ながら日本円でやりとりするということで、為替変動リスクが発生しにくいといえます。5.災害によるリスクが回避できる日本は地震や台風によって大きな被害を受けやすく、これらの災害の被害によって企業活動の停止を余儀なくされることも珍しくありません。その点、ニアショアを活用して事業拠点を複数確保しておくことで、災害発生時のリスクを分散させやすくなります。例えば、本社を都心部に設置し、開発拠点を地方の企業に移行させることで、災害のリスクを回避するうえで高い効果が期待できます。とはいえ、委託先企業と受託先企業の距離が近い場合、災害のリスク回避の恩恵が受けにくくなる点は留意しておきましょう。オフショアのデメリット続いて、ニアショアを通じて業務委託を行う際に生じる可能性のデメリットの中から、代表的な2つをピックアップし、順番に解説します。1.コスト削減幅が小さいオフショアにおける業務委託先は主として中国・インドなどの国々の企業が選ばれますが、これらの国々は貨幣価値(米ドルの為替レート)が日本よりも低いです。このことから、国内の企業に対して業務委託を行うニアショアでは、オフショアと比べてコスト削減効果が低いと考えられています。なお、企業におけるリモートワーク活用の一般化が進む中で、地域間のコストギャップが縮めば、期待できるコスト削減効果は今後さらに小さくなると考えられています。業務委託を検討する場合は、費用対効果を考慮し、どれほどのコスト削減効果を目指すのか目標と照らし合わせて委託先を選択することが望ましいです。2.人材が確保しづらい都心部と比べて地方は人口が少ないため、要望に適した人材(IT人材・ソフトウェアエンジニア等)が確保しづらい点もデメリットです。例えば、人材のスキルが低かったり、システム開発に必要なプログラミング言語を扱えるエンジニアがいなかったりすることで、ニアショアによる業務委託が困難なケースも存在します。オフショアのメリット・デメリットも簡単にご紹介します。オフショアのメリットコスト効率低コスト地域へのアウトソーシングにより、大幅なコスト削減が期待できる。専門的なスキル特定の地域は特定の技術や業界に特化した専門家が豊富に存在することがある。オフショアのデメリットコミュニケーションの難しさタイムゾーンの違いや言語の障壁により、コミュニケーションが困難になる場合がある。オンラインでのやりとりがメリット・デメリットそれぞれあり。文化の違いビジネスの慣習や文化的な違いから、誤解やミスマッチが生じるリスクがある。オフショアの詳細は下記の記事で解説しています。オフショアとは?メリット・デメリット、IT業界での意味オフショアと比較してニアショアが向いているプロジェクトニアショアとオフショアにはそれぞれ異なるメリット・デメリットが存在するため、両者の特徴・ポイントを把握したうえで、自社で委託したい業務内容に応じて手法を選択することが望ましいです。一般的に、ニアショアが向いているプロジェクトは、以下のような目的を掲げたシステム開発だと考えられています。社内のリソース不足を補いたい高い品質を保ちたいコミュニケーションコストを下げたい一定以上の予算を準備して取り組みたい慣習や言葉の差異に悩まされずに開発を進めたい責任者を育てて安定的に開発を行いたいニアショアのメリットを踏まえると、一定のコストを費やしてクオリティの高いサービスを安定的に提供したいプロジェクトに適した業務委託方法だといえます。また、社内にエンジニアを抱えているものの、リソースが不足しているといった場合の救済策としても活用できます。そのほか、ニアショアは、プロジェクトのリーダーとして社内エンジニアを育てて、新たなサービスの運営強化につなげるための施策としても活用可能です。ニアショアとオフショアを比較した選び方ニアショアとオフショアの選び方について、以下のポイントを考慮することで、ビジネスのニーズに合わせた最適な選択を行うことができます。1.業務の内容と目的複雑な業務や高度な技術が必要な場合、専門知識を持つ地域や国を選択することが有効です。一方、短期的なプロジェクトやシンプルな業務の場合、ニアショアの方が適していることが多いです。2.コミュニケーションの頻度と重要性頻繁なコミュニケーションが必要な場合、コミュニケーションが円滑なニアショアがおすすめです。オフショアの場合、言語や文化の違いを考慮し、コミュニケーションツールや翻訳サービス、ブリッジSEを活用する必要があります。3.コスト/費用対効果予算が限られている場合、比較的低コストのオフショアが適しています。しかし、コミュニケーションのコストや品質管理のコストも考慮する必要があります。4.品質の要求高品質のサービスや製品が求められる場合、品質管理がしやすいニアショアを選択することが考えられます。オフショアの場合、品質管理のための追加の手間やコストが発生する可能性があります。5.リスク管理為替リスクや政治的リスクを避けたい場合、ニアショアが適しています。一方、災害リスクや市場の変動リスクを考慮する場合、オフショアの国や地域を選択することが有効です。6.長期的なパートナーシップの観点長期的な関係を築きたい場合、文化や言語の類似性があるニアショアが適しています。オフショアの場合、長期的な関係を築くための追加の努力やコミットメントが必要です。まとめニアショアは、国内の地方都市の企業や拠点に業務委託を行い、コスト削減や災害リスクの回避などのメリットが期待されます。一方で、オフショアはニアショアと比較して、人件費の安い海外企業に業務委託する手法で、言語の違いや時差、文化的な違いが挙げられる違いとなります。ニアショアのメリットとしては、コスト削減、スムーズな意思疎通、社員がコア業務に集中できること、為替変動リスクの回避、災害リスクの回避などが挙げられます。デメリットとしては、コスト削減の幅が小さいことや、人材の確保が難しいことが考えられます。最終的には、ビジネスの目的やニーズ、リソース、リスクを総合的に評価し、ニアショアとオフショアのメリット・デメリットを比較し、どちらが最適かを判断し、最高のプロジェクトチームを結成しましょう。