ミャンマーは「アジア最後のフロンティア」と呼ばれており、オフショア開発では単価の安さや言語の壁の低さ、日本人との親和性の高い文化や国民性、政府によるIT人材育成の後押しなどがメリットとして挙げられます。しかし、一方でデメリットも存在します。それらを理解し、適切な対策を講じることで、オフショア開発プロジェクトの成功への道を切り開けます。本記事では、ミャンマーの魅力とともに、ミャンマーでのオフショア開発成功の秘訣を解説します。オフショア開発の魅力とは?ミャンマーという国についても併せて解説オフショア開発の魅力オフショア開発といえばシステム開発を海外の開発会社や子会社などに委託する開発手法を指しますが、具体的にどのようなメリットがあるかご存知でしょうか?以下にオフショア開発における一般的なメリットをまとめましたので御覧ください。またオフショア開発について詳細に知りたい方は「海外システム開発のメリットとデメリット、成功するためのポイント」という記事もご参照ください。コスト削減オフショア開発では人件費が安い海外の開発会社に開発を委託するためコスト削減が期待できます。人材確保日本では、ITエンジニアの不足が深刻化しています。一方、海外ではITエンジニアの人口が急増しています。そのため必要な人材を確保できるという点でもオフショア開発は有効です。柔軟な開発体制オフショア開発では海外の開発会社と協力して開発を行うため、柔軟な開発体制を構築することができます。例えば日本と時差の少ない国とリアルタイムでコミュニケーションを取りながら共同開発を進めたり、逆に時差が大きい国とはビジネスアワーのズレを利用して24時間体制での開発を実現したりと開発体制の幅が大きく広がります。ミャンマーの歴史と現状ミャンマーは東南アジアのインドシナ半島西部に位置する国です。国土は日本の約2倍で中国、インド、バングラデシュ、タイに囲まれています。人口は2023年の時点で推定5400万人程、公用語はミャンマー語(ビルマ語)です。ミャンマーの歴史は紀元前11世紀頃までさかのぼり、現在のミャンマー北部にアーナン王国が興った後、ビルマ王国が建国されました。ビルマ王国は19世紀初頭にイギリスの植民地となりましたが1948年に独立を獲得しました。イギリスから独立後も軍事政権による統治が続き民主化への道のりは険しいものでしたが、2010年以降民政移管が進み、民主化への動きが加速し、2015年にはアウンサンスーチー氏率いる国民民主連盟が選挙で勝利し政権を奪取しました。しかし2021年2月、軍事クーデターが発生し政情が再び不安定になるも2023年9月現在は再び安定に向かっています。ミャンマーを選ぶメリットその1:単価の安さベトナム、インドと比較した人月単価ミャンマーをオフショア開発に上げるメリットとして真っ先に挙げられるのが単価です。単価の安さから注目を集め、2022年のオフショア開発先1位に選ばれているベトナム(*1)と比較すると、プログラマー1人あたり13万円程ものコストカットが実現できます。尚シニアエンジニア、ブリッジSE、PMはミャンマーの方が単価が高いのは熟練のエンジニアや高度なスキルを持つITエンジニア人材が不足していることが要因となっている可能性があります。現在ミャンマーでは技術や実績が急速に伸びている他、日本語学習者も急増しているため、シニアエンジニア、ブリッジSE、PMの単価も下方修正されていくこともありえます。またオフショア開発の歴史が長く2022年のオフショア開発先では3位に選ばれているインド(*2)と比較すると1人あたり13万円〜26万円程も単価が安くなっています。インドはオフショア開発の歴史が長くエンジニアの技術力も高い傾向がある分、単価は高い水準となっています。人月単価(万円)プログラマーシニアエンジニアブリッジSEPMミャンマー27.4754.1668.3397.50ベトナム40.2249.1357.7379.38インド50.8368.7594.29111.43参考:オフショア開発.com オフショア開発白書「2023年版」(1)(2)オフショア開発.com オフショア開発白書「2023年版」よりミャンマーを選ぶメリットその2:言語の壁の低さオフショア開発における大きな課題の1つが言語の壁ですが、ミャンマーにおいては2つの点でこの壁が比較的低いといえます。日本語学習意欲の高さ2023年7月2日の日本語能力試験(JLPT)のミャンマーの受検者数は10万人を超え、国別での応募者数では2位を記録しました。ちなみに日本国外の受検者数の1位は中国の15万人ですが、中国の人口が約14億人に対してミャンマーが5400万人程であることを考えるとミャンマー人の日本語学習に対する意欲の高さが分かります。日本語との類似点の多さミャンマーの公用語であるミャンマー語と日本語はどちらも主語・目的語・動詞の語順を持ちます。このためミャンマー人は日本語を習得しやすいといわれています。更にミャンマー語は日本語と同様、敬語を有する言語です。相手との関係性や状況に応じて言葉遣いや表現を変える敬語は日本語を外国語として学習する際の大きな障壁となりがちです。しかし母語であるミャンマー語で敬語の概念を理解しているミャンマー人にとって敬語の習得は比較的容易で、正しい敬語の使用を求められるビジネスの場面でも大きなメリットといえます。ミャンマーを選ぶメリットその3:日本人と親和性の高い文化や国民性ミャンマーの文化や国民性といえばどのようなものをイメージしますか?実はミャンマーは日本と似通った文化や国民性を有しており、日本人と仕事をするうえでとても相性が良いといわれています。以下に具体的な類似点を挙げているのでご覧ください。年長者を敬う文化ミャンマー人は礼儀正しい国民性です。ミャンマー語は日本語と同様に敬語を有する言語であることには触れましたが、年長者や目上の人に対して敬意を払い丁寧な言葉遣いや態度を心がける点も日本と似通っています。勤勉で努力家ミャンマー人は勤勉で努力家な傾向があり、農業や漁業、製造業などさまざまな分野で働き経済発展に貢献しています。この点も日本人の国民性や仕事に対する姿勢と類似しており、日本人と仕事をするうえで相性がいいといえるでしょう。温和で親切な性格ミャンマーは敬虔な仏教信者が多く、2014年の国政調査によると約88%が仏教徒とのことです。そのため仏教の「因果応報」の教えが根付いており犯罪率が少ないうえ、温和で他人を思いやる気持ちが強く、困っている人を見ると助けようとする傾向があります。ミャンマーを選ぶメリットその4:政府によるIT人材育成の後押しミャンマー政府はIT産業の振興と経済発展を図るため、IT人材育成を重要な政策課題と位置づけています。その具体的な政策としては以下のようなものが挙げられます。教育機関におけるIT人材育成ミャンマー政府は大学や高等専門学校において、IT関連の教育プログラムを拡充しています。また、IT人材育成の専門機関として、ミャンマー情報技術訓練センター(Myanmar Information Technology Training Center)を設立し、IT技術者やプログラマーの育成を行っています。民間企業との連携による人材育成ミャンマー政府は、民間企業との連携による人材育成にも力を入れています。具体的には民間企業が実施するIT研修やOJTを支援する制度を整備しています。ミャンマーのオフショア開発のデメリットと対策ここまでミャンマーでのオフショア開発の魅力についてお伝えしてきましたが当然、デメリットもあります。しかしながらデメリットに対しては適切な対策や工夫をすることでリスク回避をすることができます。政情不安2021年にクーデターが発生し、一時政治情勢が不安定な状況にありました。2023年9月現在は比較的安定しているとはいえ今後もクーデターの影響で開発プロジェクトが遅延したり、中断したりするリスクがあります。このようなリスクに備えて開発期間中は政治情勢についてこまめにニュースを確認しておくとよいでしょう。また契約書に政情不安に対するリスクを盛り込んでおくことも有効です。未発達なITインフラ整備ミャンマーのITインフラは日本に比べると回線の速度が遅い、停電が頻発するなど未発達な部分があります。このため停電などのリスクも鑑みた開発計画を立てておく必要があります。また開発前に現地企業に通信インフラの安定度合いや過去の通信インフラ関連のリスク対策事例についても確認しておくとよいでしょう。システム開発実績の少なさと技術力の不足ミャンマーのオフショア開発は歴史が浅く未だ実績は少ない状況です。そのため技術力も不足している場合があります。このため最初は小規模案件や簡単な案件から依頼していく、日本の開発ノウハウを伝えながら開発を進めていくなどの工夫が必要です。近年ミャンマーでのオフショア開発実績が増えており、技術力も急速に上昇しています。ミャンマー人の勤勉で努力家な国民性を考慮に入れると近いうちにエンジニアの技術水準も飛躍的に上がる可能性が非常に高いです。まとめ以上がミャンマーオフショア開発についての紹介となります。以下にミャンマーオフショア開発の特徴をまとめましたのでミャンマーを検討する際の参考としていただければ幸いです。ミャンマーオフショア開発まとめ東南アジア諸国の中でも単価が安い日本語学習者が多く、ミャンマー語事態が日本語と似ている点が多いため言語の壁が低い年長者と敬う文化、勤勉で努力家、温和な性格など日本人と仕事をするうえで相性のいい国民性である政府がIT人材育成政策を打ち出しており、エンジニアの数も水準も急速に伸びている政情が不安定であるため開発時は現地のニュースのこまめな確認、契約書条項に政情不安リスクについて盛り込んでおくと安心ITインフラが未発達で停電等のリスクがあるためリスクを盛り込んだ開発計画が必要開発実績や技術力が追いついていない部分があるため最初は小規模案件を依頼したり、日本から技術供与をしながら開発を進めると良い