ラボ契約(ラボ型開発)とは?ラボ契約とは、オフショア開発(海外の国・地域の企業・法人に対して、システム・ソフトウェアの開発業務を委託すること)における契約形態の一種です。別名「オフショア開発センター(Offshore Development Center:略称「ODC」)」とも呼ばれています。ラボ契約は、ラボ型開発を行う際に締結する必要のある契約です。ラボ型開発(英語:Lab-type Development)とは、オフショア開発の一種であり、一定期間にわたって海外のエンジニアで構成される専属チームを確保し、委託元の指示でシステム開発プロジェクトを進行させることです。したがって、ラボ型開発は、ラボ契約によって進められるオフショア開発だと定義できます。画像は、実際にラボ契約を結ぶ際の契約書のひな形です。タイトルは「ラボ契約」ではなく「業務委託契約書」となっていることがほとんどです。オフショア開発およびラボ型開発について理解を深めたい場合は、以下の記事をご覧ください。オフショア開発とは?活用される背景や目的、メリット・デメリットを解説ラボ型開発とは?メリット・デメリット、請負型との違い、注意点を解説準委任契約オフショア開発の契約形態としては、準委任契約と請負契約の2つが挙げられますが、ラボ契約は準委任契約に分類されます。(3つ目の契約類型である委任契約は法律行為を委任する契約で趣旨から外れるため説明を割愛)準委任契約では「仕事の実施」を契約内容とし、特定の業務・行為に対して報酬が発生します。契約が締結されると一定期間(3カ月〜1年程度)にわたり人材を確保し、委託元の指示で開発業務を行います。契約期間中であれば、プロジェクトの進捗状況に応じて開発内容を変更することも可能です。準委任契約には本コラムで解説するラボ契約の他に、エンジニア個人を発注企業に常駐させるSES契約(System Engineering Service契約)もあります。SES契約については以下の記事で詳しく解説しておりますので、システム・ソフトウェアの開発にご興味、またはご検討されている方はぜひ併せてご一読ください。SES契約(System Engineering Service契約)とは?契約内容や注意点、請負契約・派遣契約との違いも解説請負契約オフショア開発における請負契約とは、「仕事(プロダクト)の完成」を契約内容とする契約のことで、受託開発(請負型開発)と呼ばれています。報酬は、委託先が納品した成果物に対して支払われます。発注者により明確な要件定義が行われた後、委託先が仕様書に沿って設計・開発・実装・テストまでを行い、期日までに成果物を納めるのが基本的な流れです。委託先には契約不適合責任が伴い、納品後の一定期間にわたりシステムに不具合が生じた場合に責任が課される点に特徴があります。ラボ契約と請負契約の違いラボ契約と請負契約は、「外部のエンジニアに対してシステム・ソフトウェアの開発業務を委託する契約」という点では共通しているものの、契約の目的に大きな違いが見られます。ラボ契約は作業要員・期間をベースとする契約であって「仕事の実施」が目的となるのに対して、請負契約ではプロダクトの完成をベースとする契約であって「仕事の完成」が目的として掲げられます。一般的に、契約の発注段階で開発プロジェクトの詳細が完全には定まっておらず、これから要件定義を確定していくというケースでは、ラボ契約の採用が適していると考えられています。これに対して、契約の発注段階で開発プロジェクトの要件定義(納期・仕様など)が明確化されているケースでは、請負契約を採用することが多いです。これから進めていく開発プロジェクトの特徴によって、契約形態を選択しましょう。請負契約については、契約に伴って依頼することになる請負開発と併せて以下記事で解説しておりますので、ご検討の際はご一読ください。請負開発とは?受託開発やラボ型開発との違い、メリット・デメリットラボ契約のメリット・デメリットラボ契約の締結には多くのメリットが期待される一方で、デメリットの発生が問題となるケースも少なからず存在します。本章では、ラボ契約の締結にあたって生じる可能性のある主なメリット・デメリットを順番に取り上げます。メリットはじめに、ラボ契約の締結により期待されるメリットの中から、代表的な3つをピックアップし、順番に解説します。開発コストを抑えられるオフショア開発の実施により、自社で社員を雇用する手間と人件費を削減できます。実際に開発業務を行うのは日本よりも人件費の低い国のスタッフとなるケースが多いです。特にベトナムには優秀なエンジニアが多く、日本人エンジニアと見劣りしない技術レベルを持っています。また、請負契約では、納品完了後に修正点が生じたり、当初の仕様から変更があったりした場合に追加費用が求められるのに対して、ラボ契約では契約期間内であれば追加費用の発生がないため想定外の出費を抑えられます。以下の記事では、ベトナムが日本企業によるオフショア開発の業務委託先として大きな人気を集めている理由を解説しています。オフショア開発でベトナムを選ぶ根拠とは?単価/IT人材/日本語/地理仕様変更を容易に行えるラボ契約であれば開発中のシステム・ソフトウェアに仕様変更が生じたとしても、都度の見積修正や調整、それに伴う契約内容の変更といった対応を行う必要がありません。契約期間内かつ契約した人員で対応できる工数の範囲内であれば、開発リソースを自由に活用できる点は非常に魅力的です。優秀なエンジニアを一定期間確保できるエンジニア不足の昨今、自社で採用活動を行うことは決して容易ではなく、集めたスタッフが必ずしも優秀とは限りません。その点、ラボ契約を活用すれば、自社で採用・育成を実施することなく、外部の優秀なエンジニアを必要な期間・必要な人数だけ確保することが可能です。また、契約期間中は基本的に同じメンバーで開発が進められることから、担当エンジニアが委託元のシステム・業務内容などに習熟することで、開発業務の円滑化や品質の向上なども見込まれます。弊社のラボでは、特に中心となるブリッジSEやPM人材にナレッジがしっかりと伝達・蓄積されることにより、日本側の工数がほとんどかからなくなることも多いです。ブリッジSEとどのような関わり方をすればラボ型開発が成功するのかを、以下記事で解説しておりますので、ぜひご一読ください。ブリッジSEとは?仕事内容と成功するための関わり方を解説デメリット次に、ラボ契約の締結によって発生するリスクのあるデメリットのうち、代表的な2つをピックアップし、順番に解説します。マネジメントのノウハウを備えておく必要ラボ契約では委託元が主体となって開発プロジェクトをマネジメントしていく必要があるため、請負契約に比べて大きな負担がかかりやすいです。チームを構築して開発プロジェクトを円滑に進行させていくまでには一定の時間を要します。また、オフショア開発のノウハウが備わっていないと最大限に活用できず、失敗してしまうケースもあります。ここに関しては、事前にしっかりと依頼先と話しておくことが重要です。依頼する仕事がない場合にもコストが生じるラボ契約の締結にあたっては、開発プロジェクトが早期に終了し、依頼する仕事がなくなったとしても、契約期間中であれば最低保証分としての報酬を支払い続けなければなりません。そのため、契約期間内は最大限に人材を活用できるよう、あらかじめ入念に計画を立てておくことが大切です。また、要件が明確に定まっており、納期も決まっている案件の場合には、請負契約の締結も検討しましょう。まとめラボ契約とは、オフショア開発における契約形態の一種であり、ラボ型開発を進めていくにあたって締結する必要のある契約のことです。準委任契約と請負契約の主な違いは、契約の目的にあります。ラボ契約は作業要員・期間をベースとする契約であって「仕事の実施」が目的となるのに対して、請負契約ではプロダクトの完成をベースとする契約であって「仕事の完成」が目的となります。ラボ契約の締結では、開発コストを抑えられたり、仕様変更を容易に行えたり、優秀なエンジニアを一定期間確保できたりする点にメリットがあります。その反面、マネジメントのノウハウを備えておかなければならなかったり、依頼する仕事がない場合にもコストが生じてしまったりするといったデメリットの発生が問題となるケースもあるため注意しましょう。オフショア開発を実施する際は、自社でこれから進めていく開発プロジェクトの特徴を把握し、それに適した契約形態を選択してください。