インドのオフショア開発は高い技術力を享受できる一方で、単価高騰や日本語対応が可能なブリッジSEの不足などのリスクも伴います。本記事ではインドのオフショア開発の動向やに加えてエンジニアのスキル、英語力やインド国内の事情等について詳細に解説し、効果的な選び方を提示します。さらに、費用削減方法や成功のポイントと失敗リスクを明確にし、活用する際のポイントを解説しています。インドのオフショア開発とは?インドはIT人材が豊富で、高品質な開発が低コストで可能となるため、多くの国際企業がオフショア開発の拠点として選んでいます。IT大国インドでのオフショア開発の魅力とは?インドでのオフショア開発の魅力とは、英語を公用語としているが故のエンジニアの英語力の高さと、豊富な開発実績により培われた技術力の高さにあります。インドのオフショア開発の歴史は1980年代に始まります。当時インド政府は、ソフトウェア産業の発展を促進するために、外資系企業の誘致や税制優遇措置などの政策を実施しました。この政策によりインドには多くの外資系企業が進出し、IT人材の育成が進みました。また、インドの教育水準の向上も、IT人材の質の向上につながりました。1990年代になると、インドの人件費が安価であることや、英語力の高いIT人材が豊富であること、更にアメリカとの時差が12時間であることから24時間体制での開発が可能となることから欧米企業を中心にオフショア開発需要が急速に拡大しました。2000年代に入ると、日本企業もインドのオフショア開発を活用するようになりました。2023年現在、インドのオフショア開発は世界最大のオフショア開発市場となっています。インドには数多くのオフショア開発企業が存在し、さまざまな規模や業種の企業からオフショア開発の委託を受けています。オフショア開発のメリットについてついておさらい海外の開発会社や子会社などに委託する開発手法「オフショア開発」の一般的なメリットについて下記をおさらいとして確認ください。またオフショア開発について詳細に知りたい方は「海外システム開発のメリットとデメリット、成功するためのポイント」という記事もご参照ください。1)コスト削減オフショア開発では人件費が安い海外の開発会社に開発を委託するためコスト削減が期待できます。2)人材確保日本では、ITエンジニアの不足が深刻化しています。一方、海外ではITエンジニアの人口が急増しています。そのため必要な人材を確保できるという点でもオフショア開発は有効です。3)柔軟な開発体制オフショア開発では海外の開発会社と協力して開発を行うため、柔軟な開発体制を構築することができます。例えば日本と時差の少ない国とリアルタイムでコミュニケーションを取りながら共同開発を進めたり、逆に時差が大きい国とはビジネスアワーのズレを利用して24時間体制での開発を実現したりと開発体制の幅が大きく広がります。2023年最新版のインドのオフショア開発単価比較インドのオフショア開発とは、企業がコスト削減や専門技術の利用を目的に、インドのIT企業や専門家と協力してソフトウェアやシステム開発を行うことを指します。インドはIT人材が豊富で、高品質な開発が低コストで可能となるため、多くの国際企業がオフショア開発の拠点として選んでいます。インドとフィリピン、ベトナムオフショア開発単価の比較オフショア開発白書(2023年版)によるとインドとフィリピン、ベトナムの人月単価は以下のようになります。人月単価(万円)プログラマーシニアエンジニアブリッジSEPMインド50.8368.7594.29111.43フィリピン35.83153.3381.2570.83ベトナム40.2249.1357.7379.38(*出典:オフショア開発.com.オフショア開発白書(2023年版) 2023年1月6日〜1月26日調査)インドは他の2国に比べて高額となっており、11〜41万円程高額です。単価が高い要因としてはエンジニアの技術力向上により、低価格を売りにするオフショア開発から技術力を押し出した高付加価値のオフショア開発にシフトした他、開発依頼に対してエンジニアの供給が追いついていないという事情があります。オフショア開発のリスクの解説オフショア開発には様々なリスクが伴います。主なリスクとして、政情や外交関係の影響、コミュニケーションの齟齬、品質のばらつき、コストや納期のオーバー、情報漏洩の恐れなどが挙げられます。これらのリスクを回避・解決する方法として、適切な国の選定、ブリッジSEの導入、具体的な仕様書の作成、進捗の確認、セキュリティ教育などが考えられます。適切な対策を講じることで、オフショア開発のメリットを最大限に活かすことが可能です。各国共通のオフショア開発におけるリスクオフショア開発において各国で共通しているリスクが、言語と国ごとの文化の違いによるコミュニケーショントラブルです。このためどの国でオフショア開発を行う場合においても要件に則って開発されているかや進捗状況の確認などこまめな確認が必要となります。インドのオフショア開発特有のリスクインドは日本に比べて納期を守るという意識が希薄です。このため進捗確認は念入りに行う必要があります。また近年インドの人件費は高騰傾向にあります。オフショア開発白書(2023年版)によるとプログラマー、シニアエンジニア、ブリッジSE、PMの2023年の単価は2022年と比較すると平均して約38%も上昇しており優秀なエンジニアは日本人SE以上の高単価となる場合があります。インドのオフショア開発の単価高騰によるリスク近年、インドのオフショア開発の単価が高騰が懸念されています。単価高騰によりプロジェクトのコストが増加し、予算超過のリスクが高まります。インドオフショア開発の相場が高騰する背景前出にて2023年度のインドオフショア開発の単価は昨対比から平均して約38%上昇していると述べましたが、単価高騰の背景にはインドのIT人材の技術向上とブリッジSEの希少性、オフショア開発需要に供給が追いついていないという事情があります。日本語を話せるブリッジSEの希少性欧米のオフショア開発先として発展してきた歴史を持ち、公用語に英語を採用しているインドのIT企業は現在も英語圏の国がメインターゲットです。このため日本語対応が可能なブリッジSEの数が少なく確保が難しいために単価も高騰するという事情もあります。人件費高騰によるリスク昨今単価の高騰が激しいインドのエンジニアは日本人エンジニア以上の単価となる場合があります。費用削減を目的にオフショア開発を行う場合にはエンジニアの単価に対してスキルや経験が見合ったものであるかどうかを調査してから依頼しなければ余計な出費に終わってしまう可能性があります。インドのIT技術者・システムエンジニアの英語力やスキル高い英語力を有するインド人エンジニアインドは英語が公用語のひとつとして採用されいるため英語教育が充実しており、多くのエンジニアが英語を話すことができます。一般的には日常会話や業務に必要な英語は問題なくこなせるレベルです。但し英語力には個人差があるためプロジェクト開始前に予め確認しておくとよいでしょう。欧米のオフショア開発先として実績を重ねたスキルインドは英語が堪能な人材が多いだけでなく、アメリカとの時差が12時間であるため24時間体制での開発が可能として欧米諸国のオフショア開発拠点として注目されてきました。こういった背景事情から大型開発も多く経験し、エンジニアはスキルを磨いてきました。インド国内での競争激化によるスキル向上オフショア開発が火付け役となってIT産業が成長しているインド国内ではエンジニアの競争が激化しています。その結果エンジニアは常にスキルアップに努めており、こういった環境がさらなる技術向上に繋がっています。インド政府によるIT人材育成支援インド政府はIT産業の発展を促進するために、IT教育の充実に取り組んでいます。その一環で大学にIT関連の学科を設置して優秀なIT人材を育成しています。こうした支援があるためインドのエンジニアは就職前にもIT技術を磨く環境下にいるのです。インドのオフショア開発コスト削減ポイント一般的なオフショア開発の費用削減方法その1:仕様書の明確化オフショア開発では仕様書を明確にすることが重要です。仕様書が曖昧だと認識齟齬が生まれ、それによって開発の途中で変更や追加が発生し、コストがかさむ可能性があります。一般的なオフショア開発の費用削減方法その2:プロジェクトの分割大規模なプロジェクトにオフショア開発を取り入れる場合は、分割して複数の開発会社に依頼することで、コストを削減することができます。一般的なオフショア開発の費用削減方法その3: 定期的な進捗及び品質チェック定期的に進捗状況の確認や品質の確認をすることで開発状況を把握し、トラブルを未然に防ぐことができます。一般的なオフショア開発の費用削減方法その4:現地のパートナー企業の活用オフショア開発委託先を選定する際や、プロジェクトの進め方について現地の事情を熟知したパートナー企業にサポートしてもらうことで、コストやリスクを削減することができます。インドオフショア開発特有の費用削減方法その1:ブリッジSEのコスト削減インドは日本語ができるブリッジSEが希少であるため、ブリッジSEの人件費相場が高い傾向にあります。しかしインド人エンジニアは英語力が高い傾向があるため自社で英語が堪能な人材を確保できる場合はブリッジSEを介さずにインドの企業と直接やり取りができ、ブリッジSE分のコスト削減が可能です。インドオフショア開発特有の費用削減方法その2:複数社への見積もり依頼インドのIT産業は政府の支援を受けており国際競争力が増している一方国内競争も激化しています。こうした事情により企業間のコスト競争が活発であるため、複数社に見積もり依頼をすることでコスト削減の余地があります。インドオフショア開発特有の費用削減方法その3:あえて単価の高いSEに依頼インドのエンジニアはその技術力の高さ故に単純な人件費でいえば高額になりがちです。しかしながらその高い技術力で開発工数を大幅に削減し、結果的に費用が削減できる場合があります。 最近は、ベトナムのオフショア開発や円安により沖縄・北海道などの国内ニアショア開発も価格的に近くなっていますので、あわせて比較・検討することもおすすめします。2023年のインドのオフショア開発動向インドのIT産業の現状・動向インドのIT産業は近年、急速な成長を遂げています。このため高度な技術を要するプロジェクトに対応できるエンジニアが増加し、人材価値が上昇している他、オフショア開発需要の増加による人材不足が深刻化しています。高品質・高付加価値案件へのシフトかつてインドをオフショア開発先に選ぶ主目的は費用を抑えるためでした。しかしIT産業が発展し、高度な技術を持つIT人材が増加した昨今では高品質・高付加価値の開発へのシフトが進んでおり、今後もその傾向は続くと考えられています。先端技術を使用する案件の強化インドのIT産業は近年、先端技術への対応を強化しています。そのためAIやIoTなどの先端技術を活用した開発にも対応できるエンジニアが増えており、これらの技術を活用した開発案件の拡大が見込まれます。海外進出の加速インドではIT企業の海外進出が加速しています。中でも特に隣国であるバングラデシュへの進出を拡大しており、バングラデシュ政府はインド企業の進出を促進するための優遇措置を導入しています。こういった背景からインドの国外でもオフショア開発サービスを提供できる企業が増えてきています。インドのオフショア開発の成功のポイントと失敗のリスクインドはオフショア開発の歴史も古く、高い技術を持つエンジニアが多数在籍しています。しかし文化や言語の違いに留意しなければオフショア開発が失敗に終わる可能性もあるため以下のポイントを押さえて開発を進めると良いでしょう。仕様書の明確化による追加工数発生の防止仕様書の内容が曖昧であると、日本国内では暗黙の了解で通じる内容も文化が異なるインドでは伝わらない場合があります。このため日本国内で完結するシステム開発では暗黙の了解となっている事項も明記し、認識齟齬による開発途中での変更やそれによる追加工数の発生を未然に防ぎましょう。定期的なコミュニケーションによるプロジェクト管理プロジェクト開始語も定期的にコミュニケーションを取る時間を確保しましょう。現地企業とコミュニケーションを取ることで品質の確認や進捗確認を行い、開発状況を把握することができます。こうした定期的な確認は費用の削減だけでなく納期の遅延や追加工数発生なども防ぐためにも有効です。現地のパートナー企業の活用による最適な開発先探しインドの事情を熟知した現地のパートナー企業にサポートしてもらうのも有効です。こうした企業は日本企業とインド双方の特徴を理解しているため、技術力・コミュニケーション能力・費用など要望に最適な企業を選定し、コストやリスクを削減する手助けをしてくれます。インドオフショア開発の注目ポイントは?どんな案件が向いているの?インドオフショア開発の特徴まとめここまでインドオフショア開発の魅力からリスクやデメリットについて解説してきましたが、特徴をまとめると以下の通りとなります。英語を公用語として採用しているためエンジニアの英語力は高い水準である。80年代から欧米のオフショア開発先として大型案件などの実績を積んできているため技術力が高い。技術力の高さから人件費は高い傾向があり、日本人エンジニアの単価を上回る場合もある。欧米企業がメインターゲットの企業が多いため日本語を話せるブリッジSEが希少であり単価が高い。インドオフショア開発向きの案件とは?技術力の高さに注目!インドでのオフショア開発の特徴を踏まえると、最適な案件は高い技術力を要求される案件やインド人エンジニアの英語力が生かされるグローバルなシステムやサービスの開発でしょう。IT産業も成熟期に入ったインドオフショア開発の主目的は最早コスト削減ではなく、中にはあえて日本人エンジニアよりも人件費が高いインド人エンジニアに依頼する場面も出てくる程です。但し開発実績や技術力は企業によって異なるためオフショア開発依頼前に確認すると良いでしょう。まとめ以上がインドオフショア開発の解説となります。インドはかつては人件費の安さを押し出したオフショア開発を押し出していましたが、現在は高単価・高付加価値のオフショア開発をメインに展開しています。そのため現在のインドオフショア開発はコストカット目的というよりかは技術力の高さやグローバル案件のノウハウが求められる案件の際に選択するとよいでしょう。ちなみに、インドと国名が似ているインドネシアもオフショア開発が注目されています。下記リンクよりご参考ください。インドネシア オフショア開発の単価とリスクを比較して選ぶポイントを解説本記事を読んでくださった皆さんのオフショア開発が成功することを祈っています!