開発コストとは?本記事において、開発コスト(英語:Development Costs)とは「システム開発の実施にあたって発生するコスト」をさします。開発コストは、大まかに以下のような種類に分けることが可能です。種類概要システム開発費システム開発作業(例:設計・プログラミング・テスト・ドキュメント作成など)を進めるためにかかる人件費のこと。プロジェクト管理費プロジェクトの管理者が進行状況や品質を管理するためにかかる費用のこと。その他の間接費プロジェクトの形態により、オフィス・機器のレンタル費や交通費などが間接費として発生することがある。システム開発費システム開発作業(例:設計・プログラミング・テスト・ドキュメント作成など)を進めるためにかかる人件費のこと。プロジェクト管理費プロジェクトの管理者が進行状況や品質を管理するためにかかる費用のこと。その他の間接費プロジェクトの形態により、オフィス・機器のレンタル費や交通費などが間接費として発生することがある。上記のほかにも、開発コストには、システム開発環境や開発に使うソフトウェア・ハードウェアの費用も含まれることがあります。また、予期せぬ問題が発生したときのために、「リスク費」として予備の費用を確保しておくケースも珍しくありません。さらに、仕様変更によって追加の作業が必要になることを見越して、その対応費用も開発コストの一部として考えておくことも大切です。開発コストの算出方法開発コストの算出方法を知るためには、まず開発コストの具体的な内訳と、その大半を占める人件費の算出方法を理解することが大切です。ここからは上記2つの項目を順番に解説しますので、それぞれ把握しておき、開発コストの算出時にお役立てください。開発コストの内訳まずは、開発コストが見積書にどのような項目として落とし込まれるのか、内訳の一例を下表にまとめました。項目概要要件定義ユーザーがそのシステムで何をしたいのか、なぜそのシステムが必要なのかを分析・検討し、その実現のために実装しなければならない機能や性能などを明確にするためにかかる費用。設計サーバーやアプリといったシステム開発に必要な土台を形成するためにかかる費用。開発・実装設計書をもとに、システム上へプログラミングを行うためにかかる費用。テストシステムを作った後に、正常に動作するかをチェックするためにかかる費用。スケジュール管理システム開発に必要な一連の作業の流れを調整するためにかかる費用。導入サポート初期設定やマニュアル作成といったクライアントが導入から実際に使用するまでをサポートするためにかかる費用。運用保守導入後、不具合なく活用できるようメンテナンスやシステムの改善を施したり、万が一の障害やトラブル発生時に対応したりする際にかかる費用。設備購入費用システム開発に必要な機材・設備などの購入にかかる費用。その他の実費そのほかにシステム開発に必要とされる費用。開発コストの大半を占める人件費の算出方法一般的に、開発コストのほとんどは、システム開発費(人件費)が占めています。そのため、開発コストを把握するには、人件費の算出方法を理解しておくことが大切です。システム開発の人件費は、以下の計算式を用いることで算出できます。人月×人月単価×開発期間人件費を求める計算式で用いられる言葉の意味を以下にまとめました。人月(にんげつ):作業量(工数)を表す単位で、1人が1ヶ月働いた作業量を1としたもの人月単価:1人が1ヶ月働いた場合にかかる費用開発期間:システムの開発とリリースまでにかかる期間人月は、簡単にいうと「システム開発に1ヶ月間に必要な人員の数」のことです。例えば、システムの開発に1ヶ月で5人のスタッフが必要な場合、「5人月」と表現されます。ここからは、ディレクター1名・プログラマー2名・エンジニア2名の合計5人でシステム開発を行うケースを想定し、人件費を算出してみます。全員の人月単価を65万円とし、開発期間を3ヶ月と仮定した場合、人件費は以下のとおり算出することが可能です。5人×65万円×3ヶ月=975万円人件費を算出する際に注意すべきなのは、システム開発ではシステムの規模・機能・難易度などによって必要なスタッフの人数や開発にかかる期間などが変動することです。つまり、システム開発の内容によって、必要な人件費は変動する点を認識しておきましょう。開発コストが高くなる要因開発コストが高くなる要因としては、主に以下が考えられます。開発期間の延長テストの実施それぞれの要因とコストが高いと感じたときの対処法を詳しく解説しますので、コスト削減を図る際にお役立てください。開発期間の延長前述のとおり、開発コストの大部分は、開発に携わるスタッフの人件費です。そして、システム開発にかかる人件費は、開発期間が長引けば長引くほど増加します。開発期間を長引かせないためには、プロジェクトに最適な開発手法を選択し、適切な開発スケジュールを策定することが大切です。これにより、開発期間の予期せぬ延長を防いで、人件費が膨らむことを防げます。また、システム開発に役立つツールを使用して一部の作業を自動化することでも、開発期間を短縮し、コスト削減につなげられます。テストの実施システム開発では、その工程の大部分をテストが占めます。システムの品質を追求すればするほどテストケースが増え、それに伴ってコストも増加しやすくなるでしょう。そこで、テストに役立つツールを使用しテストを自動化・最適化すれば、大幅なコスト削減効果が期待できます。また、テストの計画を策定する際は、システムに求められる品質の基準を明確に設定しておくことが重要です。そのほか、テストの実施規模や目的などもあらかじめ定めておけば、テストにかかるコストをより効果的に抑制できます。開発コストの削減方法6選前章でも一部紹介しましたが、開発コストを削減するための方法は数多く存在します。本章では、開発コストの削減方法として特に効果が期待できるものを6つピックアップし、順番にわかりやすく解説します。丸投げにしない一般的に、システム開発の全工程をSIerやベンダーなどに外注すると、工数が増える傾向があります。なぜなら、業務を外注する際は、社内と社外の間で意思疎通や意思決定などの工数が追加で求められるためです。システム開発において工数が増えれば、それだけ人件費が大きくなりやすいです。そこで、内製化によって、システム開発を社内で完結させられるようにすると、外注時に行っていた外部とのコミュニケーションにかかる工数が不要となります。また、内製化により同じ組織内でコミュニケーションを完結させることで、組織内ですでに共有されている知識や理解をもとに作業を効率的に進めることが可能です。その結果、システム開発全体で必要な工数が減ったり、それぞれの工数にかかる時間を削減できたりするため、コスト削減の効果が期待できます。計画段階で時間をかけるシステム開発のスケジュールが厳しいと、計画段階を急いで終えて、一刻も早く設計作業に取り掛かりたいと考える方もいるかもしれませんが、これはおすすめできません。なぜなら、計画の策定が疎かになってしまい、システム開発のプロジェクトが不適切な方向に進むリスクがあるためです。プロジェクトが不適切な方向に進めば進むほど、軌道修正にかかるコストが増大する傾向があります。そこで、システム開発を始める際は、計画段階に時間をかけることが大切です。具体的には、必要な作業の明確化や解決すべき問題の把握、それに対する解決策の検討などを時間をかけて入念に行うべきです。システム開発の初期段階に時間をかけることで、複雑で大きなコストのかかる修正作業・手戻りを減らせるため、結果的にコストを抑えながらスムーズにシステム開発を進められます。解決したい課題や欲しい機能を明確にする前項と共通するポイントですが、解決したい課題や欲しい機能を明確にしたうえでシステム開発に着手することも、開発コストを削減するうえで大切です。システム開発を行う際は、解決したい課題や欲しい機能といった目標をはっきりと定めておかないと、開発が進む過程で大規模な修正や追加作業が発生し、予定外の費用が発生する可能性があります。また、完成した後で「結局、あの機能は不要だった」と気づいて、無駄なコストを支払ってしまうことになる事例も珍しくありません。こうした問題を防ぐには、システム開発で目指す目標を明確かつ測定可能な形で設定してください。例えば、以下のような具体的な目標を定めましょう。販売管理の作業時間を現状の1/2に削減する勤怠管理のスタッフを2人削減する4ヶ月で月間売上150万円を達成するECサイトを作成するそのほか、システムに搭載する機能については、必要な機能だけでなく、不必要な機能もはっきりと定めることが望ましいです。これにより、システム開発の方向性がより明確になり、コストを削減しやすくなります。開発に必要な情報を把握しておく当然ながら、システム開発を進めるには、システムが目指す目標以外にも、多くの情報が必要です。例えば、以下のような情報を事前に確認し、整理しておくことが求められます。誰がどういった形でそのシステムを利用するのか、どれほどの操作性が必要かシステムがどのような環境で使用されるのか現在既存のシステムがあるのか、あるならばどのように使われているか将来的に、システムを別の環境に移行する予定はあるのかトラブル発生時の対処法はどうするのかそして、これらの情報に基づいて、開発するシステムに搭載する機能の要件を設定していくことが大切です。無駄な機能を取り除き、開発途中での要件変更を最小限に抑えるためには、上記に挙げたような情報を念頭に置いて、要件定義を詳細に行う必要があります。これにより、開発がスムーズに進行し、結果としてコストの削減につながるでしょう。補助金を活用するシステム開発を対象とする補助金の活用でも、開発コストの抑制が期待できます。システム開発で活用できる代表的な補助金は以下の4つです。それぞれの対象者や補助上限額も併せてまとめました。名称主な対象者補助額ものづくり補助金革新的な製品・サービス開発を計画する中小企業750万円~5,000万円IT導入補助金業務効率化・売上アップにつながるITツールの導入を計画している中小企業5万円〜450万円小規模事業者持続化補助金持続的な経営に向けた経営計画に基づく、販路開拓の取組を行う中小企業50万円事業再構築補助金新型コロナウイルス感染症の影響で売上が減少し、思い切った事業再構築の意欲がある中小企業100万円〜8,000万円申請方法・給付スケジュール・申請要件など補助金の詳細は、それぞれの公式HPでご確認ください。参考:ものづくり補助金総合サイト IT導入補助金2023 小規模事業者持続化補助金(一般型) 事業再構築補助金オフショア開発を採用するオフショア開発とは、海外の国・地域の企業や法人に対して、システム・ソフトウェアの開発業務を委託することです。日本よりも人件費の安い海外のリソースを活用することで、開発コストを削減できます。オフショア開発は、大まかに「ラボ型開発」と「請負型開発」の2つに分類されます。このうちラボ型開発を採用すれば、一定期間にわたり専属チームを確保でき、委託元の指示でシステム開発を進めることが可能です。つまり、単なる外注のようにシステム開発を丸投げすることなく、入念にコミュニケーションを取りながら開発業務を委託できます。その結果、システム開発全体で必要な工数が減り、開発コストの削減につながります。以上を踏まえると、ラボ型開発を採用したうえで、計画段階に時間をかけて、要件定義をはじめシステム開発に必要な情報を開発チームにしっかりと共有すれば、開発過程で大幅な修正が発生することなく、より一層のコスト削減効果が見込めるでしょう。オフショア開発およびラボ型開発について理解を深めたい方は、以下の記事をご覧ください。オフショア開発とは?活用される背景や目的、メリット・デメリットを解説ラボ型開発とは?メリット・デメリット、請負型との違い、注意点を解説まとめ開発コストとは、システム開発の実施にあたって発生するコストのことです。開発コストのほとんどを占める人件費の算出方法は以下のとおりです。人月×人月単価×開発期間開発コストが高くなる主な要因としては、以下が挙げられます。開発期間の延長テストの実施上記の要因を踏まえて、以下の施策を講じることで、開発コストの削減が見込めます。丸投げにしない計画段階で時間をかける解決したい課題や欲しい機能を明確にする開発に必要な情報を把握しておく補助金を活用するオフショア開発を採用するそれぞれの施策をしっかり把握したうえで、自社の状況に適した方法で開発コストの削減を目指しましょう。より効果的に開発コストの削減を図りたい場合、ラボ型開発の採用をおすすめします。