今回は、株式会社これからのあやさん(AdSISTコーチ、写真左から2番目)、カリーナさん(AdSIST QAチームコーチ、写真左から3番目)、フィリップさん(Project manager、写真左から4番目)の3名をお招きし、事業の内容やfreecracyのラボ型開発を活用するメリット・デメリットなどを中心にお話いただきました。▼株式会社これから(COREKARA.Inc)2012年1月設立。ネットショップ制作、Web広告運用代行、ECコンサルティング、AdSIST※の開発・運用、商品の企画・販売、プログラミング教室の運営などを手掛けている。株式会社これからの事業紹介ーーそれではまず、現在の事業内容をお教えいただけますでしょうか?あや:弊社では、『ネットビジネスを底上げする』というビジョンを掲げています。現在、日本のネットショップの数は280万を越えているのですが、このうち9割以上のショップでは売上があがっていない状態にあります。せっかく良い商品を取り扱っていても、集客方法がわからずに光が当たっていないECサイトは多くあって、ECサイトを静かに閉鎖していく事業者さんが後を絶たないものの、私たちは国内のネットビジネスをもっと大きく飛躍させられると考えています。「光の当たっていないECサイトを市場に流通させてスモールビジネスを再興することで、ネットビジネスを底上げしたい」と考えまして、そのためにノンストップ、つまり1社通貫でECビジネスに関するサービスを提供している、というのが現在の事業内容です。より詳しく説明すると、ネットショップの制作や、Web広告の運用代行、ECのコンサルティング、自社商品の企画・販売などが主な事業内容です。そのほか、freecracyさんのラボ型開発に協力いただきながら進めているAdSISTの開発・運用や、キッズ向けのプログラミング教室の運営なども行っています。事業内容は多岐にわたっていますが、事業の根幹は「ECサイト」です。もともとECサイトの制作を多く手掛けていましたが、「制作できたものの、広告の運用がわからない」「広告運用できるものの、商品の見せ方が効果的でなく売れない」「WEBサイトの制作ができない」「改修ができない」といった悩みを持つ事業者さんは多いので、すべてのニーズを1社で完結するために事業を拡大してきました。ーー280万を越えるということは、日本で換算すると約40人に1人が何らかのネットショップを持っている計算になるかと思いますが、すごい数ですね。あや:コロナ禍の影響により、ショップ数は格段に増加していますね。3年ほど前は160万ほどでしたが、最近では280万を超えてきている状況です。この要因には、無料で気軽にオープンできるカートシステムの増加も関係していて、個人が趣味でやっているケースも含めて280万を超えました。このシステムを利用して、もともと実店舗しか持っていなかったお店さんがネットショップを新たに作ったことも影響していると思います。ーー現在はネットショップを簡単に始められるようになっているものの、そこからどうしていったら良いのかわからないという事業者さんも多そうですね。あや:「ネットショップのアカウント・サイトを開設し、運営してはいるものの閲覧者がいない」というのが第一難関ですね。現在は膨大な数のネットショップがあり、Googleで検索しても上位にあがってこないとお客さんに見てもらえないので、広告運用を行う必要があります。「広告運用はできたものの、なぜか売れない」というのが、次に立ちはだかる難関です。「お金をかけて広告運用を行ったものの、売上が伸びなかった」という問題が発生することもあります。こうした諸々の問題が発生する事情を踏まえて、弊社ではネットショップの開設から広告運用に至るまで最初の段階からお手伝いしているだけでなく、プロセスの途中にある事業者さんの現在の状況を踏まえてコンサルティングを行い、改善を図るサービスも提供しています。ーー御社ではもともと広告運用およびサポートなどを手掛けていると思いますが、最近ではAdSISTの開発・運用なども行っている中で、今後どのような事業プランを検討していますでしょうか?あや:弊社の今後の成長プランには、AdSISTの存在が大いに関わっています。現在、IPO(株式公開)を目指している真っ最中にありますが、IPOにおいてもAdSISTの可能性を認めてもらっていることも関係しています。少し話を戻しますが、「現在、ネットショップの数は280万を越えるまでに拡大しているものの、その多くで集客ができていない」という問題がある中で、広告運用を行うだけのお金・人材・ノウハウがない、リテラシーが低いという事業者さんも多くいます。そこで今後、集客を行うためのツールとしてAdSISTを活用していきます。現在は日本向けに行っていますが、今後は海外進出もしていきたいと考えています。ーー広告運用の方法は、日本と海外の国々でどれほど異なるものでしょうか?あや:日本のEC・広告の文化は、世界的に見て非常にユニークと言われています。そのため、集客ひいてはECサイトなどについては、欧米やアジアなどその国々の特徴に応じた戦略を構築する必要があると考えています。弊社には、さまざまな国出身のメンバーがいるので、彼らから意見をもらいながら、海外進出の方法を決めていければと思います。弊社のサービス自体、Amazonや楽天などのモール型ではなく、自社ECに特化しています。アジア圏内ではモール型の方が盛んなケースもあるため、こうした事情に対してどのような働きかけを行えるのか、また、カナダなど自社ECに強い国に向けたECサポートについても、今後もっと詰めて考えていく必要がありますね。ーー御社の開発部隊にはさまざまな国出身のメンバーが集まっているかと思いますが、営業部隊には日本人のスタッフがメインで在籍していますよね。その中で、海外戦略はどのチームが検討・構築していくのでしょうか?あや:開発チームに在籍するメンバーであっても、当然それぞれのメンバーが自身の国の文化を知っていますので、「開発チームだから」と区別せずに、それぞれのメンバーからその国の文化について意見を聞いていくことを重要視しています。「誰が何をするか」という部分においても、弊社でも優秀な営業部隊も抱えているとはいえ、例えば、現地に支社を作った際に現地で営業部隊を集めるケースも想定されますが、この指揮を取るのが自社の開発チームとなる可能性もゼロではないわけです。また、弊社では「可能性」と「メンバーの個性」を生かしていきたいということをコアバリューとして掲げていますので、こうした点を踏まえて今後について検討していきたいと思っています。AdSISTの重要性ーー今後IPOを目指していく中で、プロダクトとしての「AdSIST」は重要なカギを握ることになるかと思いますが、この開発の重要性はどれほど高いものなのでしょうか?あや:AdSISTは、弊社のビジョンを体現するツールだと考えています。「集客ができない」「知識がない」などの課題を持ったショップさんに寄り添うためには、これらの問題を簡単に解決できるツールが必要になってきます。人材・資金がない場合は人を雇えないため、ノウハウを詰め込んだツールでそれをサービス提供したい。そのためには、やはり開発が必要不可欠です。弊社がこれまで培ってきたECのノウハウをすべて詰め込んだツールを開発部隊に実現してもらい、サービスとして使えるようにしていきたいので、開発の重要度は非常に大きいものですね。ーー現在開発を手掛けているスタッフの方々は、もともと広告運用のプランナーやマーケティングを行っていた人などではないと思います。なおかつ、御社では海外のエンジニアの方も多く在籍していると思いますが、日本人の営業部隊の方々とコミュニケーションを取る際に難しいと感じる場面はありますか?フィリップ:弊社には、プロのマーケターの方々が多くいます。私たちエンジニア側としてはマーケティングの知識がないため、新しい広告ネットワークを実装する前に、プロのマーケターから意見をもらうことで開発がスムーズに進んでいます。カリーナ:私も最初はマーケティングの知識が全然なくて困難に感じましたが、勉強会がたくさん開催されているので、知識を吸収できました。それを後々の開発に生かしていますね。あや:開発メンバーが広告用語を使いこなしていくようになる姿を見て、「私も頑張らないとな」と感じますね。すごくたくましいです。意志疎通という観点でいうと、ちょっとした理解の相違が生じることもあり、課題の1つではありますが、議事録を作るなどの対策を講じる必要性を感じています。現在、具体的な対策方法を模索中です。ーー抱えているエンジニアの方々はすべて外国人というユニークな状況の中で、今後どのようにAdSISTの開発を進めていく予定でいますか?あや:現在、国境を超えたエンジニア採用も行っていて、freecracyさんのラボ型開発以外にも、海外で一緒に働くメンバーを数名ほど抱えています。もともと彼らは海外で採用した後に日本に来てもらう予定でしたが、コロナ禍で足踏み状態だったために現在も海外で仕事をしてもらっています。ただ、これにより海外から仕事を行ってもらうベースを構築できたので、今後も引き続き海外から働ける環境を整備していきたいと考えています。弊社の代表は個性・可能性を大切にしていて、メンバーの国籍はそれほど気にしていません。文化やバックグラウンド、考え方の違いなどによって新しい要素を生み出せるというポジティブな面を考慮すると、特別意識して日本人のエンジニアを取っていないわけでも、海外のメンバーだけで開発していくと決めているわけでもありません。ただ、現在はちょうど英語がメインのチームになっているので、この点をクリアできれば誰でも入れます。もちろん、今後は日本人のエンジニアが入ってくる可能性もあります。優秀なエンジニアでも、英語が話せないと開発チームに加われないのが現状なので、今後は言語の壁を取り払っていきたいですね。言語の壁を超えて、優秀な人材が集まる環境を作っていきたいです。海外のエンジニアと開発を始めた理由ーーもともと日本に会社があった中で、開発を海外のエンジニアと始めた理由はどういったものでしたか?あや:理由というよりも、タイミングが合ったことが大きいです。もともとAdSISTのプロジェクトが走り出す前、そのためのエンジニアを探していたときに、弊社の代表から「日本人にこだわる必要はないんじゃないか?」とアドバイスをいただきまして、私が英語でコミュニケーション取れることもあったので、試しに「外国籍の方で日本にいるものの、日本語が話せないために、エンジニアとして活動できない」という方達を探してみることにしました。そこで、外国籍向けの採用媒体で募集をかけたところ、多くの応募が来まして、そこで出会ったメンバーの中に、そのとき外注していたAdSISTの開発環境と同様の環境をすでに経験していた人がいたので、AdSISTの開発メンバーに据えたらどうか?という話になり、そこからAdSISTがビルドアップしていきましたね。また、弊社にはもともとHTML CSS コーダーとしてECサイトを構築していたメンバーもいたのですが、その方から「実はフロントエンド的な立ち位置の方が、より大きな力を発揮できると思う」という言葉をいただいて、AdSISTに移動してもらったことがありました。こうした経験から、開発の方法や進め方などに関して多くのことを学び、現在につながっています。ーー現在、AdSISTの全体の進捗率はどれほどでしょうか?あや:今はアクセルを踏んで、機能実装に力を入れており、一通りの機能実装がほぼ完了しているので、今は使い勝手などより良くするフェーズに移行中です。1から3年先を見据えながら、今後も計画していることややりたいことは非常に多くあります。とはいえ、開発の出だしはスムーズだったものの、ユーザーが増えることで気が付く修正点・改善点なども出てきているので、この対応も並行して進めなければならないですね。ーー海外のエンジニアと一緒に働く中で、良かった点や難しかった点などはありましたか?あや:海外の方からは、やはり考え方や取り組み方、姿勢などから学ぶことが多いです。また、海外進出を考えると、「母国で有名なECサイトは何?」といった質問を投げかけた際に、その国の特徴に気付かされることもありますね。実際に近くで日々一緒にいる方々から、いろいろな学びを吸収できるのは非常にプラスだと思います。それと同時に、考え方や文化などの違いはあるものの、毎日一緒に働くことで「違いに慣れる」ことが多くなるので、感覚的に国籍の壁がなくなっていきます。なので、「その国の人」ではなく、「その人、個人」として接することができるようになりました。日本人でも生活環境や生まれた場所によって違いは見られますが、これと同じ感覚で海外の方とも接することができますね。難しい点でいうと、私も英語がたどたどしい部分はあるので、うまく伝わっているのか不安になることはありますね。また、会社の観点からいうと、弊社のスタッフの90%は日本人で、日本語で進められる業務も多くあるので、今後は英語がさらに浸透するようになればと思っています。フィリップ:良くも悪くも、(日本人から見た)外国人は意見が強いと思います。良い点は、例えば話し合いなどで、わかりやすい意思表示を行うことです。難しい点は、ときどき場の雰囲気が落ちることです。喧嘩とまではいかないものの、話し合いが長引いてしまうことがあります。あとは、それぞれのメンバーが違う文化・背景を持っているので、みなさんと接していく中で、常に新たな発見が得られることは良い点ですね。カリーナ:難しい点でいうと、言語の壁や知識の壁があることですね。基本的に、エンジニアはエンジニアのチーム内のみで仕事をするので、マーケティングなど他のチームの方とは仕事をしません。他の分野の知識や専門用語などの理解が不足しているので、チーム外の方と話すときに困難を感じることがあります。良い点は、考え方や文化などの違いが面白かったり、勉強会が設けられていたりすることです。コロナ禍以前は食事会・ハロウィン・夏祭りなど社内でのイベントも多く開催されていたので、いずれまたやれるようになったら良いなと思っています。freecracyのラボ型開発を利用した感想ーーそれでは最後に、freecracyのラボ型開発を利用した感想を率直にお聞かせいただけますでしょうか?あや:かなり有効的だと感じています。これまでもfreecracyさん以外のラボ型開発、オフショア開発のチームと一緒に仕事をしたことがあるのですが、そこで「社内と同じ温度感を保てるかどうか」という点を課題として感じました。当然ながら社内では開発や目標のために動いていく一方で、オフショア開発のチームでは給与やタスクとして与えられた仕事の達成のために動いていく傾向が強いので、こうした背景までを理解してもらって一緒にコラボレートしていくのはとても難しいです。他責にならない形で一緒にゴールに向かって仕事を進めていく必要がある中で、チームのメンバー募集から携わっていた私の立場からすると、freecracyさんのラボ型開発チームは自社と非常に近しい存在として感じることができました。オフショア開発のメンバーの方々は、ミーティングに積極的に参加してくださるなど、スムーズな業務進行に貢献してくれています。先月(2022年5月)、ついにメンバー募集が目標に到達したので、今後どのように開発を進めていくかが重要になってきますが、今後が非常に楽しみです。カリーナ:最終的なリリースのタイミングで人が足りなかったので、freecracyのラボ型開発には助けられましたね。QAの方も非常に優秀です。フィリップ:ラボ型開発チームの方々のやる気は非常に高く、新しい機能の実装時にも助かっている一方で、プロジェクトマネージャーの立場でいうと、タスクを分けたり管理することが難しいので、今後の課題として捉えています。※株式会社これからが開発する国内NO1ネットショップ自動集客ツール。