カンボジアでのオフショア開発には、単価の安さ、親日で穏やかな国民性、優秀な社員の確保のしやすさと高い将来性、時差の少なさなど、多くのメリットがあります。一方で言語や文化・習慣の違い等からくるデメリットも存在します。そのため最適な選択をするためには、両面を理解することが重要です。本記事ではオフショア開発の魅力とカンボジアという国について簡単に説明したうえで、カンボジアでオフショア開発をするメリットとデメリット、それに対する対策についてを解説していきます。カンボジアでのオフショア開発の魅力とは?現状も併せて解説カンボジアでのオフショア開発の魅力とは?カンボジアでのオフショア開発の魅力は親日で協調性のある国民性と単価の安さ、国やIT技術が発展途上であるが故の将来性の高さ、更には日本との時差の少なさという地理的メリットも挙げられます。カンボジアの歴史と現状の紹介カンボジアは東南アジアのインドシナ半島に位置する国で面積は約18万平方キロメートル。日本の四国と九州を合わせた程度の大きさです。人口は約1,600万人で公用語はクメール語です。建国は1953年ですが独立後の内戦や社会主義革命を長く経験し、民主主義政権が成立したのは1993年です。このように民主主義化して年月の浅く課題も残る国ですが近年は経済成長を続けており、2023年のGDP成長率は7.5%と東南アジアで最も高い成長率を記録しています。また日本とカンボジアは復興支援や社会開発等での関わりが盛んで、こういった関わりが国民の親日感情にも繋がっています。オフショア開発のメリットについてついておさらい海外の開発会社や子会社などに委託する開発手法「オフショア開発」の一般的なメリットについて下記をおさらいとして確認ください。またオフショア開発について詳細に知りたい方は「海外システム開発のメリットとデメリット、成功するためのポイント」という記事もご参照ください。1)コスト削減オフショア開発では人件費が安い海外の開発会社に開発を委託するためコスト削減が期待できます。2)人材確保日本では、ITエンジニアの不足が深刻化しています。一方、海外ではITエンジニアの人口が急増しています。そのため必要な人材を確保できるという点でもオフショア開発は有効です。3)柔軟な開発体制オフショア開発では海外の開発会社と協力して開発を行うため、柔軟な開発体制を構築することができます。例えば日本と時差の少ない国とリアルタイムでコミュニケーションを取りながら共同開発を進めたり、逆に時差が大きい国とはビジネスアワーのズレを利用して24時間体制での開発を実現したりと開発体制の幅が大きく広がります。カンボジアを選ぶメリットその1:親日で穏やかな国民性日本による復興支援やインフラ整備、教育支援や交流カンボジアは1975年から1979年にかけてポル・ポト政権による大虐殺が行われ、国民の約10%が死亡するなど大きな被害を受けました。日本はこの復興支援に積極的に取り組み、1980年代にはカンボジアに食糧や医薬品を支援し、1990年代には、日本政府と民間企業が共同でインフラ整備や教育支援を行いました。現在もカンボジアから日本への留学や就労者は増加し、日本や日本文化に触れる人は増えています。このような交流を通してカンボジア人の親日感情は醸成されていると考えられます。宗教観や文化・歴史により醸成された穏やかな国民性カンボジアは仏教国ですが、儒教の影響も強く受けています。このため、これらの教えに基づいた温厚で優しい性格が培われています。貧困や内戦などの困難な歴史を経験したことが勤勉で素朴な性格にもつながり、また、儒教に基づいた家族やコミュニティを大切にする文化から、協調性や礼儀正しさも身に付いているといわれています。 カンボジアを選ぶメリットその2:単価の安さカンボジアを近隣国のベトナム、フィリピンと比較したカンボジアの単価カンボジアとほかの国の比較についてです。カンボジアのGDPは2015年〜2023年の10年間で平均5.11%と高い成長率を誇りますが、日本と比較してまだまだ物価や人件費は安い水準にあります。例えばエンジニアの単価の安さと単価に対する技術力の高さでオフショア開発先として選ばれているベトナムと比較すると、技術レベルにもよりますが一人あたり10万円前後下げることが出来ます。またベトナム以上に単価が安いこととエンジニアの英語力の高さが注目されているフィリピンと比べても一人あたり単価は10〜15万円程コストカットすることが可能です。国エンジニアブリッジSEカンボジア26〜38万円36〜59万円ベトナム40〜49万円58万円フィリピン36〜53万円81万円参考:オフショア開発.com オフショア開発白書(2023年版)カンボジアを選ぶメリットその3:将来性の高さオフショア開発パートナーとしての参入障壁の低さ前章で単価を比較したフィリピンは公用語の一つに英語が選択されています。このためフィリピンのエンジニアの英語力は高い傾向にあり欧米各国からの注目されているため現地企業も欧米向きのビジネス展開をメインに据えています。一方で政情が安定し始めてまだ日も浅いカンボジアはまだまだ他国からの注目度も低い状態です。このため復興支援等で培った関係性を土台に中長期的な目線でオフショア開発先パートナーとなることを見据えた関係構築を考えるのもよいでしょう。グローバルIT人材育成を見据えた現地の教育機関の増加カンボジアは近年、コンピューターサイエンス、ソフトウェアエンジニアリング、Webデザイン、ゲーム開発、データサイエンスなど、さまざまなITスキルを学ぶことができる大学や専門学校の設立がされています。これらの学校では英語で授業が行われるところも多く、将来オフショア開発で言語面でも強みを発揮するエンジニアの輩出が期待できます。日本とカンボジア政府との連携カンボジアではIT人材育成のため2018年1月から日本のJICAとカンボジアの郵電省情報通信技術研修所と共同で研修を実施を開始した他、2020年12月発表では室蘭工業大学とデータサイエンス等の分野で共同研究を開始するなど日本と共同での活動も行われており、IT分野でも技術交流が行われています。参考:PR TIMES.2020年12月11日最終更新."室蘭工業大学・カンボジア工科大学・EdMuseがグローバル産学連携による協働研究をローンチ".https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000016.000063191.html.(2023年9月22日参照)カンボジアを選ぶメリットその4:時差の少なさカンボジアと日本の時差はわずか2時間で日本が進んでいます。このため業務時間のズレがあまりありません。この特徴には以下のようなメリットがあります。時差が少ないメリットその1:日本とリアルタイムでの共同開発が可能時差が少ないため日本とカンボジアのエンジニアが共同で開発を進めることができ、それぞれの強みを活かした開発が可能になります。またコミュニケーションのタイムラグによるストレスが少なく、迅速かつ効率的な開発が可能となります。時差が少ないメリットその2:緊急時やトラブル発生時も現地と迅速な連携・対応が可能開発時には不測の事態や緊急対応が必要な瞬間はつきものです。その際も業務時間が近く、リアルタイムでのコミュニケーションが取りやすいと迅速に対応することができて被害を最小限に抑えることができます。時差が少ないメリットその3:開発の方向性の修正が容易オフショア開発拠点の開発状況を日本からリアルタイムに確認することができるため、遅延や不具合などのリスクを早期に発見できます。またフィードバックや修正の指示もリアルタイムに行うことができるため、開発の方向性を迅速に調整・修正することができます。カンボジアのオフショア開発のデメリットと対策言語の壁カンボジアは新日国家ですが流暢に日本語を話せる人はあまり多くありません。また英語力に関しても近年向上しているとはいえ話せるエンジニアは多くありません。そのため、コミュニケーションの際には、言語の壁が大きな障壁となりえます。言語に不安を感じる場合には専門の会社と契約してブリッジSEを雇用する等工夫が必要です。システム開発実績の少なさカンボジアのオフショア開発が活発になり始めたのは2000年代と最近のことで、実績は未だ不足している部分もあります。このため実績が豊富な企業を選ぶ、実績に加えて企業の評判を確かめる、日本企業の技術やノウハウを導入するなどして現地の人材の教育を進めながら開発を行うとよいでしょう。日本との納期や品質基準認識の違いカンボジアは日本に比べて納期や品質基準に関して甘い傾向があるのも注意が必要なポイントです。そのため開発中はこまめな進捗や品質の確認等、密なコミュニケーションが重要となってきます。またテスト時には現地企業でのテストに加えて日本でもテストを実施するなどダブルチェック体制をとることも有効です。このようにこまめなチェックをすることで問題が大きくなる前に対処しやすくなります。未発達な通信インフラ関連整備カンボジアの通信インフラは近年急速に整備が進んでおり、2023年現在モバイル通信の普及率は約100%に達しています。しかし、首都プノンペンを中心に電力供給は改善されつつあるとはいえ現在も停電などのリスクがあります。このため開発前に現地企業に通信インフラの安定度合いを確認しておき、開発計画も停電リスク等を考慮に入れて立てておく必要があります。祝日の違い開発スケジュールを引く上でカンボジアの祝日や休日、大型連休の時期を把握しておくことも重要です。例えばカンボジアでは土曜日も出勤する人が多いなど日本とカンボジアの常識が異なる点があります。こういった違いや有給の使い方の傾向など生活様式の違いを知っておくとトラブル防止に繋がります。まとめ以上、カンボジアでのオフショア開発のメリットについて解説しました。カンボジアは政情が安定してから日が浅く、IT分野においてもまだまだ外国との交流は少ない状況です。現在はシステム開発実績が少なく通信インフラも整備途上であるなど新興国ならではの課題もありますが、逆にいえば参入余地の大きい国であるともいえます。そんなカンボジアは、日本は復興支援や工業技術や教育発達支援などを通して培った関係性の強みを活かしてオフショア開発のパートナーとしても有効な関係性を築いていけるポテンシャルの高い国です。▼関連記事オフショア開発比較:主要国の特徴とメリット・デメリット